庭のかたすみ

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[B'z][Magazine]  90年 BEAT ON! RISKY全曲解説

'90・11・19 BEST HIT SPECIAL PICK UP


'91年に向けてBHが推薦する期待のアーティスト達。そのトップを飾るのはB'zだ。
稲葉浩志松本孝弘。この最小にして最強のユニットは、新しいビートを日本中に巻き起こしている。
NEW ALBUM「RISKY」をリリースした後、ライブ・ツアーもスタート。まさにイケイケで攻めまくるB'zだが、「BEAT ON!」はその全貌に迫ることができるか!?

89年のデビュー当時、B'zがここまで短期間でビッグ・アーティストになることを誰が予想しただろうか?
おそらく彼ら自身もそのスピードに驚いたことだろう。試行錯誤を繰り返してきた彼らが『BAD COMMUNICATION』で火がついた結果、手にしたものは?
それは多くの支持者と自由だったと思う。“やりたいことを好きにやれる自由”。何よりも得がたい二つの物を手中にしたB'zはさらに前進してゆく。
その行き先はすでに二人には見えているのかもしれない。

一般の人達は『太陽のKomachi-Angel』の初登場1位で、その存在を知ったことだろう。
そして10月4日発売の『Easy Come,Easy Go!』は、その倍の売り上げでまたも1位に輝いた。
“完全にBREAKした”と誰もが感じている中、当の二人は「いや、まだまだ」とまるで他人事のようだ。
B'zという怪物はたえず変化をしながら、ごく当たり前に街に溶け込んでゆく。気をつけなければいけない。
油断をしていると、いつの間にか彼らのBEATが頭の中に入り込んでいるはずだから。




[RISKY PERFECT LINER NOTES] 文/竹内 美保 撮影/黒澤 誠

B'z自身による「RISKY」全曲解説。この問題作の一貫したテーマは、“何かを探し求める旅”だ。
懐かしい写真を織り込みながら、彼らの旅を追ってみることにしよう。


『RISKY』
松本:今まではいつもシングルになる曲から始まってたでしょ、アルバムは。前からやりたかったんだけどね、こういうイントロダクションぽいものって。
シングルを冒頭に持ってきた時は、アルバムの冒頭のインパクトというよりも割とその曲のインパクトとかでやってたんだけども、
もうそろそろアルバム自体でのインパクトっていうのを考えてっていうので。で、またコンサートでもうまく繋げられるし。個人的にインストゥルメンタルに興味あるしさ。
稲葉:これは音自体凄いクールだから、それがドキドキするなって感じします。コード進行とかも全部そうだし、ホントRISKYって感じするでしょ。
この部分、次を期待させるところまでポジション上げられれば正解だと思いますね。

『GIMME YOUR LOVE』
松本:曲の方は結構レコーディングの終わりのほうに出来たんだけど、でも凄い早かったね。曲もアレンジも早くて、すぐ出来た。
稲葉:僕はモロ身体で覚えていくタイプなので、こういうノリのものはメチャクチャやりやすいですよね。歌詞は…嘆かわしい状況?それは客観的に言ってる状況でしょ。
これは1回当事者の気持ちを見て、当事者は実際そんなに嘆かわしくもなく、もっと単純な恋愛をしてるんだってところに返りたかった。
どちらかというと気持ちの大きさのほうに重きを置いて書いたんです。だからアッシー君の意気込みとでも言いましょうか。燃えるアッシー君(爆笑)。でも、僕の友達にはいないですね。
松本:世代が違ってるんじゃないの?稲葉なんかでもそのアッシー世代より上いっちゃったんじゃないか。俺、アッシー君になりたい。そういう相手に会いたいなー(爆笑)。アッシー君に自分がなれる様な相手に会いたい。
稲葉:含蓄のある言葉ですね。

『HOT FASHION』
松本:この2曲(『GIMME〜』『HOT〜』)に関してはずっとやりたかったサウンドが形になったっていう事だからね。だからまぁ始める当初からこういう事がやりたかったんだなっていうのが、実際形になった。
どうしたらいいかわかんなかったからね、何回かレコードにしたりコンサートでやっていったりしないと。
稲葉:テーマは自分自身です。書き方としてはよくあるパターンですけど、自分自身を出発点にして“こういう人も他に一杯いるでしょ、もしかしたらあなたもそうじゃないですか?”っていうところまではいきたいなと思ってるんです。
だから…流行ものに弱いとか、洋服と同じレベルで例えば事件とかも取り扱っちゃうっていう性格を嘆いてるみたいな感じですね。
ホントはそんなに早く忘れちゃいけない事も季節が変われば同じ様に変わるってあるから、その週刊誌的なノリっていうのはちょっと辛いなっていう印象があるんだけど。

『Easy Come,Easy Go!』
松本:不安あったよなー、これシングルにするの(爆笑)。正直なところ…。やっぱり一連のダンスものでやってきてるでしょ。でも敢えて…RISKYですよ。
業界の様で業界でないって関係の方、結構いるじゃないですか、レコード店の方とか。ああいう人達に地味だとか今回は売れないんじゃないかとか言われてたから、ショックは大きかったね。
やっぱり方向変えるっていうのは…別に僕らは変わってないんだけれど、ああいう曲っていうのはアルバムの中で今までやってたから。
だけどシングルとなるとB'zの事知らない人もどんどん聴く機会あるじゃない。それにアルバムの顔でもあるしさ。結構怖いものはあったよね。『〜Komachi Angel』の時なんかは凄い自信あったけど、今回はカメリア様々(笑)。
でも沢山聴いてもらわないといい曲だって…、聴いてるうちに良くなっていく曲だと思うのね。だからコマーシャル凄く大きかったよね、今回は。
曲的には割とシンプルなメロディーでじっくり聴いてもらえるようなものをシングルにしようと思って選んだの。

『愛しい人よ〜Good Night…』
稲葉:石原プロの方にいたく気に入って頂いて。これだって予定になかったですからね、シングルの。でも、この曲自体は僕らみんな気に入ってた。やりたいタイプの曲だったから。
松本:今回、こういうのを凄い稲葉がやりたいって言ってたから。それで僕がメロディー先に作って。
稲葉:(頭の中に描いていたのは)もー、エアロ、モトリー・クルー!昔から好きでしたからね。
松本:時期的にもそろそろこういうものもいいかなって思って。だからコード進行なんかも、多分僕のにはあまりないよね、こういうのは、凄い変わってる。ギター・ソロは…自分のためだけに(笑)。
だってあの進行はギター・ソロしか出てこない進行ですからね。
稲葉:僕もそういうの好きですから。“どんどん弾いて”って。こういうのでえらい感動するんですよ、僕。詞は“そっとおやすみ”っていうヤツで(笑)、ちょっと長めに付き合った人の話ですよね。

『HOLY NIGHTにくちづけを』
松本:モータウン成功パターン?やっとのねー(笑)。でもメロディーがそういう感じのメロディーだったから、これ以外つけようがなかったね、アレンジメントの面では。
稲葉:音薄いね、これは。
松本:薄いね。このメロディーは結構前から持ってたのね、2枚目の頃から持ってたメロディーで。で、なかなかうまくハマんなかったからずっと取って置いて。
稲葉:テーマは出会った最初の夜、特別な夜、それがテーマなんで、クリスマス・イブに聴けばクリスマス・イブの夜にぴったりハマると思うし、大晦日の夜ならそれにハマるだろうし。
これはそのまますぐ出来て。僕ねギターの“ディッディッディッ”っていうところが好きなんです。あの恐ろしいほどキャッチーな。
松本:弾いてて赤面するよ(笑)。

『VAMPIRE WOMAN』
松本:これは面白いですよね、曲のパターンとしては。
稲葉:これは二転した曲ですね。
松本:最初ヘヴィメタ・アレンジでやってて全然ダメで。で、ギター・ダビングも全部やったんだけど何か違うなっていう感じで、ある日突然ハウスでやってみようと。
それやってワンコーラスくらい作ったら凄い良かったから。そのままそっちに変えちゃって。
稲葉:ギター・リフ中心だったのが、これだったら逆にカッティングと底のサウンドが耳に残るなと。前のヤツはギター・リフがメインだから凄いですよ、ヘヴィメタ(笑)。でも、こだわらないから簡単に使えちゃう、ハウス。ハウスがなんだ!(笑)
松本:そうそう。知らないものは知らないんだもん。(コーラス)このテやらせたら唯子ちゃん、No.1だよね。
稲葉:最初の会話の部分とかスタジオのブースに2人で入って。意外にも唯子ちゃん最初恥ずかしがっちゃってて。僕が“どこ行くの?”って言ったらスゲェ笑い始めちゃって(笑)。
これは特になりきって歌うっていうか。ミュージカルっていうか、夜の街の雰囲気だとかそういうのの中に立って歌うみたいなところをやんないとなかなかハマんないんですよ。
だから結構イヤらしい位にしないと、後で聴くと凄い流れて聞こえちゃうから。

『確かなものは闇の中』
松本:思えば前のツアーの夜だった…いや、この曲が出来たのは。
稲葉:この曲は一番最初に出来た曲ですね。
松本:これはメロディーとコードから作って。それに変わってる。今回サックスでしょ、だいたいギターでやっちゃうじゃない、うちの場合。
でもそういうの、『ROSY』とかって今までやってたから、今回サックスがいいなと思って…やってみたら凄いエッチな楽器なんだよね、サックスって。結構これも音薄いんですね。
だからコードとか全部鳴らさないで隙間を開けてフレーズで弾くみたいなね、うん。これは、前から僕の頭の中にあったストーリーなんですよ(笑)。
稲葉:リクエストにお応えして(笑)、松本さんの。これはよそから出発して、それを僕が形にしていくっていう(爆笑)。気持ちはわかりますからね…みんなわかると思うんですよ、ある程度の年齢いってれば。
だからこれは男の辛いところでもあり、卑怯なところでもあり…そこを突かれると困るなみたいな。
松本:やっぱり僕らは僕らの世代なりのっていうのがあるじゃない。ファンの子達と同世代の頃を回想して書く物もあるけど、こういうリアルタイムの物もやっていかないとさ。歌ってる本人たちが嘘じゃ…ね。

『FRIDAY MIDNIGHT BLUE』
稲葉:タクシー・シリーズで。これ、歌とコーラス取っちゃうとハードロックなんですよ、凄い。だから、それにこういう詞が乗ってるのも面白いかなと。
その運転手に会ったときは詞にしようとは思ってなかったんですけど、このオケが出て来た時に何となく思い出して。
松本:これはメロディーに乗せる前に歌詞カード見た時に“いいな”と思った。一番好きだね。そのタクシー・ドライバーの人に結構憧れるところあるし、共通するところもあるしね。
稲葉:憧れる部分っていうのと…人によっては凄いだらしない人だと思う人もいるだろうけど。でも人として凄い興味があったから。

『It's Raining…』
稲葉:メチャクチャ、ハードですね(爆笑)。アルバム中、もっともヘヴィなナンバーです。
松本:君にとっては(笑)。
稲葉:メロディーのない部分を一任されたっていうところが特に。僕、歌だったらどうやっても平気っていうか、恥ずかしいとかないですけど、台詞だとちょっと…。急にぎこちなくなったりしますね。
最初どうしようかなって結構悩んだんですけど、雨っていうイメージは割と最初からあったんで。で、雨の日に部屋で電話してるってイメージ…ちょっとクサいっていうか…あんまり聴いてないんですけど、自分で(笑)。
松本:これはでも凄いいい企画だった。この企画を思いついた時は何ていいアイディア!と思ったもん。自分で自分のアイディアに酔ったね、俺は(爆笑)。なんて素敵なプロデューサーなんだろう!
松本ちゃんはもう、やっぱりわかってるなって感じで(爆笑)。稲葉のファンの人にはたまんないよね。
稲葉:男が聴くと嫌になんないかな?
松本:いや、そんな事ないよ。うちの弟なんてあれだけノンストップで入れて車の中で…。
稲葉:…おかしいんじゃないの!?それ(爆笑)。