庭のかたすみ

はてなダイアリー「庭のかたすみ」移行分です

[B'z][Magazine] GB インタビュー


GB92年5月号 インタビュー
         
”今日はどうだったか”−−それはその日のうちに決着をつける

−−ツアー前に描いていたイメージどおりのコンサートができてますか?
稲:できたり、できなかったりの一喜一憂の繰り返しですよ。もっと安定
 して高いアベレージでコンサートができたら、とは思います。

−−でも、それはいつまでも思い続ける欲求みたいなものでしょ。
稲:きっとコンサートを続けるかぎり、こう思うんでしょうね。でも、考
 える次元は少しずつ上がってきてるとは思いますけどね。

−−ツアー中もっとも気をつけていることは?
稲:心身ともにどれくらいリラックスできるかと、心身ともにどれくらい
 緊張感を維持できるか。

−−コンサートホールの楽屋入りはいつも午後3時頃でしたっけ?
稲:ええ。僕はもう少し早く入りたいくらい。楽屋で当日のMCを考えた
 りするんです。ホテルの部屋だとあまりうかんでこないんで。楽屋でも
 ほかにいろいろすることがあって・・・慌ただしいのがダメみたいです、
 性格的に。だから、もう少し早く入ってゆっくりするのもいいかな、と。
 楽屋はある種の聖域的な感じもあるし。極秘事項を話してるわけでもな
 く、ただ雑誌をペラペラめくってるだけにしても、部外者立ち入り禁止
 的なものがあるでしょ。そこで知らない人が弁当なんて食べてたら、も
 うダメ。(笑)楽屋は密閉された領域にしておきたいっていう気持ちが
 ありますね。精神的な脆さがそこに出てるのかもしれませんけれど。

−−本番直前は、ピリピリしてる?
稲:そこまで神経質じゃないですけど、どこかで敏感にはなってます。い
 つものようにしていてほしいと思う。だから、よく知らない人が楽屋で
 くつろいでたりして、その隣でメイクでもしてたら、心の中では”もし
 今日のコンサートがうまくいかなかったら、このひとのせいだ”って思
 っちゃうでしょうね。(笑)”この人以外はいつもどおりなんだから”
 って。(笑)レコーディングでも、ボーカル録りのときは誰もスタジオ
 に入れずにやるし、そういう部分では神経質かな。ふだんの生活ではそ
 んなことないですからね。

−−コンサートの頭に思うことは?
稲:その日のお客さんのこと。パッと見た瞬間にビビッと感じることがあ
 るんです。”今日はいけそうだ”って。今までの経験で、自分の中で得
 意な街とか得意なホールもあるけれど、だいたいは”今日はどうだろう
 ?”とまず思います。”思う”とか”判断する”っていうよりも”感じ
 る”っていうのが近い。お客さんを感じるのが第一。人にもよると思う
 けど、ボーカリストってそういうことにデリケートじゃないですか。
 それを感じたからって、全く違うライブを自分ひとりでやるわけにはい
 かないけど、自分の中ではすごく大きなものです。毎回、一生懸命やっ
 てることには変わりないから、周りからはいつもどおりに見えたとして
 も、自分の中では”今日はお客さんとうまくノレた”とか”波長が合っ
 た”って感じがあるものなんですよ。自分なりのポイントがコンサート
 の中にいくつかあって、ここでこうして、あそこでああして、っていう
 プランを持ってる。それがビシビシ決まる日もあれば、ことごとく失敗
 した日もありました。(笑)ハズしっぱなしという。

−−フィギア・スケートの技が決まる、決まらないっていうのに近い?
稲:近いですよ。僕もアルベールビルでの伊藤みどりさんの演技を見まし
 たけど、1回目でトリプルアクセルを失敗したのに、よく後半でビシッ
 と決めたなと思った。あの気持ちの切り替えですよ。それは僕にも必要
 だと思う。でないと、ひとつのポイントをハズすとズルズルとドミノ倒
 し状態に陥ってしまう(笑)

−−ハズしたとき、松本さんを見る?
稲:見ません(笑)

−−ステージ上はある種の非日常的空間で、一種の興奮状態にあるわけで
 すよね。それとふだんとの差が精神的なストレスになることはあります
 か?
稲:それはないでしょうね。確かにステージの上では興奮状態だし、普段
 とは違うけど。よく女の子から”ステージと全然違う”って言われるけ
 ど(笑)、ステージのままが街にいたらアブナいですよね。(笑)だけ
 ど、ステージの上が虚像でステージを下りたら実像という分け方では
 割り切れない。僕にとってステージの上と下の違いは”歌っているか、
 歌っていないか”でしかないから。自分の部屋にいても、歌いはじめる
 とテンション上がることはありますからね。高校時代に自分の部屋でひ
 とりでギターを弾く真似して歌ってたときと、精神的には今のコンサー
 トのときも同じだと思う。その様子を一回だけ友達に見られて、すごく
 恥ずかしかったけど。(笑)見つけた友達の方が気恥ずかしくなるくら
 い、テンション上げてひとりで歌ってたんですよ。今はコンサートとい
 う設定があるから、見る人も恥ずかしくないだろうけど。オン・ステー
 ジとオフ・ステージで分けて見ようとするから。でも、自分の中では分
 けてないんですよ。オンもオフも同じ。だって昔はどちらも僕の部屋の
 中にあったんだから。しかもゴチャ混ぜ状態で。

−−B'zを始めたことで、そのゴチャ混ぜ状態が整理されたってこと?
稲:本当は自分の部屋の中にあるものがいちばん自然な形だと思います。
 オンもオフも渾然一体となってる様子がね。B'zを始めたばかりのころ
 は、それを整理しようと意識してたのかもしれませんね。今は、自分の
 部屋に昔あったゴチャゴチャのままをステージの上に持って出られるよ
 うになってきた。いくつもの経験を積んで、やっとそこまで来られたん
 じゃないかな。

−−コンサート終了直後は何を思う?
稲:やっぱり”今日はどうだったか?”ってことです。だけどそれは、そ
 の日のうちに決着をつけないといけない。一喜一憂はしても、翌日まで
 持ち越してはダメだと思う。たとえ凄くよくできたとしても、その余韻
 にいつまでもひたってはいられないわけですよ。全く新しいステージが
 翌日には始まってしまうんだから。始まってしまえば”きのうは最高だ
 ったんだよ”なんて言っても通用しない。その日、その時間、目の前に
 いるお客さんといかに楽しむかだから。逆に、思うようにできなければ
 クリアすべき翌日のポイントがはっきりして、気分的にスッキリするこ
 ともあります。

−−すごく満足したライブのあとって、どんな気持ちですか?
稲:もちろん、うれしいし、充実感もありますよ。でも、どこかで”明日
 はこうはいかないだろうな”って思いがあるのも事実ですね。

−−夕食はコンサート後だから、当然午後10時過ぎですよね。
稲:そうです。今回のツアーはなぜだか食欲があるんです。前回までは、
 コンサートが終わってもまったく食べる気がしない日が多かったのに、
 どうして今回は食べられるんだろう。

−−ホテルに帰って動けないっていう日はないですか?
稲:そりゃありますよ。衣装のままホテルに帰ることもあるけど、部屋に
 入って衣装を脱ぐのが精いっぱい、っていう日もあります。かと思うと
 食欲旺盛な日もある。この差は何なんだろうかって考えますよ。何が原
 因なんだろうって。だから、今は体のメカニズムみたいなものを知りた
 い。それがわかるともっと自分をコントロールできるし、もっと高いレ
 ベルで安定したコンサートができると思う。まったく非科学的な原因も
 考えますけどね、靴のひもの結び方だとか、Tシャツの柄だとか。(笑)
青森に行ったとき、リンゴ・ジュースを飲んで、次の日のコンサートの
 調子がよかったから、それからしばらくコンサート前にリンゴ・ジュー
 スを飲んでみたりもしたし(笑)

−−オフの日はどんなことしてます?
稲:とにかくリラックスしようとしてる。好きなビデオを見るとか、とに
 かく休養をとるとか。この前は東京ドームにガンズ&ローゼズを見にい
 きました。ボーカルのアクセルがマイクを投げ捨てて、コンサートの途
 中で引っ込んじゃった。自分にはない部分だから楽しめましたけどね。

−−で、コンサートは中止?
稲:いや、20分ぐらいしたら出てきて再開。でも、全体的によく見えな
 かったから、東京ドームのライブ・ビデオが出るのを楽しみにしている
 ところです。出たらオフにはそれを見ますよ。

***
                   インタビュアー:藤井徹貫







GB92年5月   松本さんインタビュー

−−ツアーの近況から教えてください。
松本「やっと折り返し点を過ぎて後半戦に入ったところだけど・・・まあ長いよね。
今回はスケジュール的に、同じ場所で2日とか3日やることも多いから、
毎日少しずつでも違う内容にしたいと思ってここまでやってきてる」


−−そうやって内容を考えていくのも、大変な作業でしょう。
松本「うん。でもバントにしてもスタッフにしても、同じメンバーで今までツアーを
やってきたから、構成や演出に手を加えても、対応が早い。すぐにまとまる。
そこが同じメンバーでやってきた利点。
どんなことにもパッと対応してくれるチームワークが固まってるって、本当に頼もしいことだよ」


−−今回のツアーが”長い”ということに向けての対策は?
松本「特にはないけど、”今回は長い”って自分たちで勝手に思い込んでてさ、意外に早い段階で
いろいろ変更や修正を加えてた。今までにも40〜50本のツアーはやってきたけど、どのときだって、
30本あたりまででこんなに内容を変えたことなんてなかったと思うよ。でも、今回は折り返し点に
いたるまでにかなり手を加えたし、途中の僕のMCも日替わりだしね。自分たちも楽しみながら、
いつも新鮮な気持ちでコンサートができるように心がけたり仕掛けたりしているのが、”長い”
ことへの対応かな、あえて言うと」


−−松本さんとしては”やっと半分”ですか”もう半分”ですか?
松本「”やっと半分まできたか”ってとこかな・・・”やっと”のほうだね。このまえ衣装担当の
スタッフが”もう半分まできたんですね”って言ってたから、人それぞれみたいだけど」


−−さっき、コンサートの内容に手を加えながらやってると言ってましたけど、どういった点に?
松本「まったく別のものにしてるわけではない。それだと”IN THE LIFE ”と銘打ったツアーとは
違ってくるからね。だから、ステージ構成上のポイントが少し異なってるわけ。大筋は同じでも、
印象としては違った感じがすると思うよ」


−−それはツアー前から考えていたことなんですか?
松本「ツアーの途中から。ツアーをまわりながら考えて、まわりながら準備して作ったもの」


−−自分たちのなかでの新鮮さをキープするには、そういうことも重要?
松本「うん。現時点でここまでいろいろとやってるんだから、後半戦が進むにつれてもっと
変わるかもしれないね。僕だけじゃなくて、ツアーのスタッフも”まだ何か変わるぞ”って
期待してたり、予測してたりすると思うよ」