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[B'z][Magazine] 95年5月? 宇都宮隆(BOYO-BOZO)×松本孝弘(B'z)
雑誌名を記録忘れ。誰か教えてください(^^;
スペシャルBIG対談。
今回のスペシャルな顔合わせは、松本さんがBOYO-BOZOのレコーディングに参加したことがキッカケだけど、2人は昔からの仲良し飲み仲間!?
超レアな思い出話や、真剣な音楽の話に花が咲きました。
地上49階。視界の上半分は青空。下半分はミニチュアみたいなビル街。神宮の森も御苑の緑も一望できる部屋にいる。
一足先に到着したロックミュージシャンは談笑しながら待つ。朝方まで起きていたらしいボーカリストがくるのを。
待ち人は間もなく登場。
「待った?」
テレ笑いを見せるボーカリスト。
「大丈夫」
苦笑いで合図を送るギタリスト。
「この前はごめんね。行けなくて」
ボーカリストは相手にしかわからない言い方をした。それだけで察したギタリストも相手にしかわからない返事をした。
「そっちも忙しそうだったもんね」
ふたりは秘密の味を楽しむように笑った。
* *
──“久しぶり”という感じですか?
宇都宮:久しぶりというほど久しぶりでもないよね。
松本:そうだね。ウツのレコーディングに呼んでもらったから、そこで結構話せたからね。お互い今何してるかは知ってるって感じだよね。
宇都宮:ニューシングルが出ます。5月31日発売の「ねがい」という。カップリングは「YOU&I」という曲(スラスラと言う)。
松本:よく知ってるね(おどろく)。
宇都宮:歌えるよ。
──では、歌っていただきましょう。
宇都宮:♪神様〜お願いだ〜。
松本:全然違う(あきれる)。
──それ古い。
宇都宮:木根しか喜ばない?
──きっと。一億五千万の読者の中で、そのギャグ読んで笑うのはひとりだけ。
宇都宮:そっすか(とぼける)。
──で?
宇都宮:B'zがレコーディング中というのは知ってるよ。でも、頻繁に電話で連絡してるわけじゃないけど。
松本:年に1〜2回くらいだよね。突発的に会うのは。いきなり飲みに行こうよって誘ったりして。
宇都宮:レコーディングの話もいきなりだったし(笑)。
松本:突然、携帯にかかってきて。
宇都宮:そう。直で。
松本:で、返事も直で。いいよ、弾くよって。その後でお互いのマネージメント・サイドの正式な話になったという。
宇都宮:普通とは逆パターン。
松本:スタジオに行ったとき、聞かせてもらった仮ギターを弾いてたのは石井(妥師)君なの?
宇都宮:そう。いつも石井が仮で弾くわけ。ときどき仮じゃなくなって、そのまま使うときもあるんだけど。
曲の感じからして、これは松本に弾いてもらったら、面白そうだなあ、と思ってさ。
松本:もう人の書いた曲でギター弾くなんて何年もなかったことだから。
──やっぱり松本孝弘のスタイルで弾いたって感じ?
松本:と言うよりも、当然、BOYO-BOZOのスタイルもあるわけだからね。そこにうまくはまるように、と心がけたつもりだけど。
自分のスタイルをゴリ押しさせてもらいますよ的なものはなかったよ。それにスタジオで曲を聞いてみたら、確かに自分に向いてると思ったしね。
無理しない感じで弾けそうだったから。しかも昔から知ってる仲だし。
宇都宮:知ってる仲だから、気軽に弾いてくれたってところは大きいよね。今のB'zとは違うタイプの音楽なのに。
松本:でも、楽しかったよ。本当に。
宇都宮:うちの石井はなかなか面白いヤツだろ?(自慢そうに笑う)
松本:個性的だよね。
宇都宮:うさんくさいヤツだけど(笑)。
松本:でも、割とちゃんとした仮ギターだったじゃない。思ったよりも、指定は細かかったけど(笑)。
サウンド・プロデューサーの西平彰さんのほうが大枠しか言わなかったよね。
西平さんとのレコーディングは初めてだったから、まず何が出てくるのかを見てみよう、という受け身の姿勢で構えていてくれたんだろうね。
宇都宮:ミュージシャンに自由にプレイしてもらって、その中からベストなものをチョイスするのが西平さんだから。その点では石井のほうが若いだけに細かい。
松本:石井君は今いくつ?
宇都宮:25歳。
松本:僕が初めてウツに会ったのと同じ歳だ。
宇都宮:その頃から僕の年齢は止まってるけど(笑)。
松本:あれはウツと石井君がふたりで作った曲?
宇都宮:そう。大体のアレンジもふたりでやってるかな。その後で西平さんに入ってもらって、レコーディング・スタジオで作っていくって感じ。
松本:スタジオでギター弾いてた時間よりも、その後で飲んでた時間のほうが長かった気もするけど。
宇都宮:そうそう(ニコニコ顔)。
松本:でも、僕がスタジオでギター弾いてるのを見たのは初めてじゃない?(笑)
宇都宮:TMのときは、あまり見てなかったから(テレ笑い)。
松本:歌うまで来ない人だから。
宇都宮:分業制だったから。今、松本が弾いてるらしいって噂はよく聞いてたけど。
──ところで、ふたりで飲みに行くと、どんな話題になるのでしょうか?
宇都宮:仕事的な話はしないけど。嫌いだから、飲んで仕事の話するのが。でも、この前は久々にしたよね。
松本:した?
宇都宮:酔っ払ってたからな。
松本:そう。覚えてないの(申し訳ないという笑い)
宇都宮:ひどいよなあ(笑)。真面目に答えたのに。今後の僕の生き方についてのウツの意見を聞きたいとか言うから。
松本:あ、そうそう。言った言った。今B'zが7年になるわけ。それで自分よりも第一線で長くやってる人の話を聞きたくなっちゃうんだよね。人それぞれだとは思うけどさ。
興味があるから。ウツもTMで10年やってきたわけだし、それに今また新たに何かをはじめてる人だから。どういう感覚で生きてるのか、すごく興味があるの。
宇都宮:確かに10年は長い時間だと思うけど、やってる瞬間は一生懸命だから、実感としては、あっという間だね。気がつくと10年経ってたって感じだと思うよ。
振り返れば、10年か、長かったなあ、みたいな。
松本:7年も、あっという間だったよ。
宇都宮:今も、あっという間に過ぎていくけど、以前と比べると、自分のペースで動いてる感じはするけどね。
──TM時代は、巨大な球の上に乗って、急な坂道をくだってるような、忙しさだったんじゃないですか?
宇都宮:大きなプロジェクトでスピード感があったという点では、そうかもね。それと比べると、今のほうが自分の判断と自分の速度で動いてる感じだよね。
その点では忙しいけど、マイペースというか。B'zもマイペースでしょ?
松本:B'zもふたりでの気軽さや身軽さからはじまったところもあったはずなのに、やっていくと、どんどん大きな集団になってきたわけ。
レコーディングするのでも、はじめた頃には想像もしなかったくらい多くのレギュラーメンバーができてきて。それで身動きできなくなりそうな気配を感じて。
だから、今回のレコーディングは、またふたりに戻って、ふたりだけではじめてるわけ。ふたりで動けるメリットを最大限にいかしたいと思って。
宇都宮:初心に戻った?
松本:核心にふれたって感じかな。
宇都宮:で、身軽になれた?
松本:すごく。稲葉もすごく楽しんでるしさ。今までは言葉を書くのと歌うのに時間を使ってたけど、今はサウンド作りにも時間を使ってるわけで、大変だと思うよ。
でも、楽しんでるのが伝わってくるから。
宇都宮:いい感じなんだ。
松本:今はすごくいい感じでやってる。
宇都宮:僕は最初のソロのときだったよね。気楽さを感じたのは。でも、逆に責任もひとりで背負い込むわけじゃない。いつもなら3人でわかちあうものを。
しかも分業できないしさ。すべてを自分で考えて、自分がやらなきゃいけなくて、自分で結果を受け止めないといけなくて。でも、その反対側に気軽さもあったよね。
松本もソロやったでしょ?どうだった?
松本:俺の場合は歌うわけじゃないからね。ライブもなかったし。でも、メロディを自分が弾かなきゃいけないという点では、プレッシャーを感じた瞬間はあったけど。
それ以外は、すごく自然にできたよね。
宇都宮:歌う気はなかったの?
松本:ないよ。今もないし。
宇都宮:松本の「時の過ぎ行くままに」は聞いたことあるけど(笑)。
松本:あとは「時間よ、止まれ」だろ(突っ込まれる前に自白する感じ)。でも、やっぱり俺はギタリストだと思ってるからね。あると思わない?ギタリストとボーカリストという特別な関係。
宇都宮:それはずっと感じてる。だから、ソロやるときも、ギタリストには特にこだわったしね。今回のレコーディングでもこだわりがあったし。それで松本にもお願いしたわけだし。
松本:今回も楽しかったし、前にウツのソロのバンドで弾いたときも楽しかったよ。
宇都宮:T・UTSU with The Bandの武道館ね。(92年)
松本:あのバンドの葛城(哲哉)君と是永(功一)君というギタリストの組合せも面白かったよね。どっちかというと、是永君のほうが現在的?
宇都宮:そうだね。葛城のほうが70年代色が強いよ。でも、ふたりともテクニックもあるし、人間的にもいいし。
葛城は普段は強気なのに割と傷つきやすかったりしてね。そういうところも好きなんだよ。
松本:見てると、ワイルドで男っぽい感じがする人だよね。
宇都宮:うん。でも、妙にナイーブなところがあって。そこがいいところ。
──TM NETWORK時代の、ふたりが一緒にツアーしている頃の思い出といえば?
宇都宮:あり過ぎ(笑)。
松本:本当にありあまるほどあるよ(笑)。
宇都宮:当然、木根と小室との思い出もいっぱいあるけど、それと同じくらい松本との思い出もあるから。
松本:ある意味では青春音楽みたいなものだよね。
宇都宮:もうあんなことはないと思うような出来事もたくさんあったし。
松本:海外にも一緒に行ったね。
宇都宮:ロンドン。松本の買い物につきあって、大変な目にあったな。
松本:よく言うよ(笑)。
宇都宮:買い物は性格が出るから。僕は気に入ったら、すぐに買っちゃうタイプ。松本はそのあたりを一周してから買うタイプ。全部見終わってから、結局最初の店で買ったこともあった(苦笑い)。
──その性格の差は部屋の様子にも現れていそうですよね。
松本:俺はきれいにしてるよ。
宇都宮:僕はそのまま(笑)。ソファーにも洋服が置いてあるし。たまに片づけはじめると、全部片づけないと気がすまない。
──レコーディングとかで長期滞在するホテルの部屋も同じ状態?
宇都宮:松本の部屋はきれいだった記憶があるけど、僕の部屋はスーツケースも開けっぱなし(笑)。一度開けたら、帰るときにしか閉めないの。
松本:だから、性格は似てないけど、一緒にツアーしてる頃は毎晩飲みに行ってた。
宇都宮:毎晩ふたりで寂しく飲んだ一番の思い出はロンドンかな。
松本:すっごい寂しかったよね(懐かしそうな顔)。
宇都宮:死ぬほど(笑)。一応は由緒正しいホテルだったけど。
松本:とにかく寂しいところにあって。
宇都宮:僕の部屋にお化けが出た話をしたら、もう松本も眠れなくなっちゃって。明るくなるまで、一緒に飲もうよ、と言って。
松本:そうそう。毎日、外が明るくなるまで飲んでからじゃないと、部屋に帰れなかったから。
宇都宮:出たのは僕の部屋なのに(笑)。
松本:だから、次は僕の部屋ってことも考えられるじゃない(笑)。
宇都宮:ふたりで2日で1本くらいのペースで飲み続けてたよね。
松本:それぐらいは飲んでた。
宇都宮:でも、僕がバーボン飲みはじめたのは松本の影響だよ。
松本:そうだっけ?
宇都宮:それを今は僕なりにアレンジして。
松本:どうしてライムを入れて飲むの?
宇都宮:ソーダとライムとバーボンというバランスが好きなの。
松本:俺は今はウォッカだね。ここ何年かはずっと。ソーダで割ってね。
宇都宮:ふたりで日本酒というか、冷酒を飲んだこともあったよね。熱燗系ではヒレ酒とか。
松本:あったなあ。シャコが美味しい寿司屋だろ。
宇都宮:そうそう。広島の。
松本:でも、日本酒は強くないよ。僕はすぐ酔っちゃう。二日酔いにもなるし。
宇都宮:僕は二日酔いしないから。
松本:未だに?
宇都宮:ないよ。
松本:それはすごいね。
宇都宮:バロム・ワンだもん(胸を張る)。
──一億五千万の読者にわかるかなあ?
宇都宮:ちょっと古いか?
──かなり古いかも(笑)。
松本:バーボンの後にワインを飲んでも二日酔いしない?
宇都宮:ワインはもともと弱いから、飲んでる最中に頭は痛くなるけど。それって二日酔いというよりも、その場酔い(笑)。だから、バーボン飲んでお茶をにごすの。
松本:酒でお茶にごさないでよ(笑)。
宇都宮:じゃあ、復活するの(笑)。
──酔うとどうなる?
宇都宮:松本は酔っ払ってる人になる。
松本:ウツはわからない。もともと口数の多い人じゃないし、最初から呂律が回ってるのか回ってないのかわからない人だから。飲んでも一緒(笑)。
でも、酔ってるなあって感じはしないよね。
宇都宮:ときどき酔っ払ってるけど、覚えてないことはないから。僕はいつもよりもうちょっと陽気になる程度だよな。
松本:そうだね。
宇都宮:木根は超陽気になるけど(笑)。陽気で優しいお兄さんになっちゃう。小室も陽気になるね。
その点では酒乱系の人はあまりいなかったかな、僕らのまわりには。あばれるとか、怒鳴るとかいう人は得意じゃないし。
松本:そのうち電話するから、また近々会おうよ。ツアー以外は東京にいるでしょ。
宇都宮:いるよ。そっちは?
松本:うちも夏にはツアーがあるけど、それ以外はスタジオにこもって、レコーディングしようと思ってるから。
宇都宮:ニューシングル「ねがい」をよろしくってことで(笑)。
──もう歌わなくていいですよ。
宇都宮:そっすか(ちょっと残念そう)。
松本:ところで、BOYO-BOZOはこれからも続けるの?
宇都宮:続けるというよりも存在していくと思うけど。割と自由に考えてるから、人数が増えてもいいかなってくらい。
松本:それはいいよね。それぐらいフレキシブル(柔軟)なほうが楽しいから。
宇都宮:一応、今はリーダーとサブリーダーということで(笑)。サブリーダーの石井は早く部下が欲しいと思ってるみたい。
松本:じゃあ、途中から僕が入った場合はどうなるの?
宇都宮:それはサブリーダーつらいな(笑)。ピンチだね。あいつ体育会系だから。先輩を立てるから。
──どう考えても、まっちゃん呼ばわりはできないでしょう(笑)。
宇都宮:できないよね。
松本:でも、ウツのまわりで石井君よりも若い人を見つけるほうが大変でしょ。結構ベテランが多いから。
──ということは、石井君は常に後輩だ。
松本:大ちゃん(浅倉大介)は?
宇都宮:大介のほうが上だよ。accessのボーカルのHIROが石井と同じ歳。
松本:そうなんだ。
宇都宮:そういえば、松本が弾いてくれた曲でHIROがコーラスで参加してるよ。
松本:どっち?
宇都宮:「DREAMS MUST GO ON」のほう。もう1曲の「GAMBLE JUNGLE」はかとうれいこさんがコーラス。
そういう点でも面白いバランスのアルバムになったと思うよ。お蔭様で。
松本:他のギターは?石井君がギター弾いてる曲もあるよね。
宇都宮:あるよ。他は鳥山(雄二)さんと野村義男君。不思議なバランスでしょ。ツアーはCHIEちゃんに弾いてもらう。
松本:元・千年コメッツの?
宇都宮:そう。
松本:いいね。格好いいと思うよ。
宇都宮:しかもドラムレス。
松本:へぇ〜。面白そうじゃない。
宇都宮:ちょうど同じ時期にツアーしてるんだよね。
松本:そうだね。ニアミスはあるのかな?
宇都宮:あれば連絡するよ。
松本:待ってるから。
* *
この後、ロックギタリストはおもむろに部屋の冷蔵庫から缶ビールを2本抜いた。
「昨日の飲み終わりから、まだ12時間も経ってないのに」
ボーカリストは苦笑いを見せたが、結局はプルオーバーの栓を開けた。
シュバッ。炭酸が勢いよく弾けた。
ふたりは缶を軽くぶつけて乾杯。
まだ空は青い。
「こういう時間から飲むのも、たまには悪くないな」
という顔で彼らは笑った。
飲み干すと、ふたりとも缶をギュッと握ってつぶした。